今回は、剰余の定理について説明していこうと思います。
剰余の定理で扱われる問題は複雑に見えがちなのですが、最後まで読むと案外簡単なことがわかります。
それではやってみましょう。
整式の割り算の「余り」(復習)
「剰余の定理」や「因数定理」はそもそも、整式同士を割り算した「余り」に着目した定理なので、簡単に復習しておきましょう。
整式\(P(x)\)を1次式\((x-k)\)で割った余りは「定数」になります。
また、\(P(x)\)を2次式で割った余りは1次式以下の式になります。
つまり、整式の割り算の「余り」にはルールがあって、「割る式」より次数が低くなるのです。
剰余の定理は一般的に1次式で割ったあまりに着目しますので、このルールが非常に大切になってきます。
では、次・・・
剰余の定理とは
\(P(x)\)を1次式\((x-k)\)で割った商を\(Q(x)\)、余りを\(R\)としたときに次の式が成り立ちます。
$$P(x)=(x-k)Q(x)+R$$
ここで、先に説明したように\(R\)は定数(数字)であることに注意します。
次に、「余り」を取り出したい!と考えます。
\(P(x)\)の\(x\)に何か代入して\(R\)の部分だけ取り出すには、どうすればよいでしょう?
・・・
\(Q(x)\)の手前の\((x-k)\)の部分を「0」にするために、\(x\)に\(k\)を代入したらどうでしょう?
そうすると
$$P(k)=0×Q(x)+R=R$$
これで取り出せそうです。
つまり、
\(P(x)\)を1次式\((x-k)\)で割った余りは\(P(k)\)となります。
これが剰余の定理です。
練習問題①
さて、実際に問題を解いてみましょう。
\(P(x)=x^3-2x^2+5x+3\)を1次式\(x-2\)で割った余りを求めてみましょう。
まず、
$$P(x)=(x-2)Q(x)+R$$
となることを意識してみましょう。
何を代入すれば\(R\)が取り出せそうですか?
・・・
その通り!「2」を代入するのです。なので今回は\(P(2)\)を実際に計算すれば余りが求まっていることになります。
それでは、実際に求めてみましょう。
\(P(2)=2^3-2・2^2+5・2+3=8-8+10+3=13\)
よって、余りは13。
どうでしたか?できましたでしょうか?
練習問題②
それでは、もう1問!
\(P(x)=x^3-x^2+x+2\)を1次式\(3x-1\)で割った余りを求めてみましょう。
手順は同じです。まず、
$$P(x)=(3x-1)Q(x)+R$$
となることを意識してみましょう。
もう大丈夫でしょうか?
\(Q(x)\)の手前の\((3x-1)\)が「0」になるように\(x\)を決めればよいので、
\(3x-1=0\)より\(x=\frac{1}{3}\)を代入すればよさそうです。
では、やってみましょう。
\(P(\frac{1}{3})=(\frac{1}{3})^3-(\frac{1}{3})^2+\frac{1}{3}+2=\frac{1}{27}-\frac{1}{9}+\frac{1}{3}+2=\frac{1-3+9+54}{27}=\frac{61}{27}\)
よって、余りは\(\frac{61}{27}\)。
できましたか?
2次式で割った余りを考える
ここまで読んでくれた人は、剰余の定理の基本はバッチリだと思います。
では、よく出題される剰余の定理の問題で、「2次式で割った余り」を考えてみましょう。
最初に説明したように、2次式で割った余りは必ず「1次式以下」で表されることから、今回は\(R\)の部分を1次式の\(ax+b\)と置くことにします。
では、早速問題を解いてみましょう。
練習問題①
\(P(x)\)を\(x-1\)で割った余りは3、\(x+2\)で割った余りは6でであるとき、\(P(x)\)を\((x-1)(x+2)\)で割った余りを求めてみましょう。
まず、\(P(x)\)を\(x-1\)で割った余りは3であるから\(P(1)=3\)となります。
ここまでは大丈夫でしょうか?
きつい!って思った人は
$$P(x)=(x-1)Q(x)+3$$
を意識してみるとわかります。
同じように、\(x+2\)で割った余りは7であるから\(P(-2)=6\)となります。
今回、
$$P(x)=(x-1)(x+2)Q(x)+ax+b$$
で、「余り」の部分である\(ax+b\)の部分を取り出すことを考えます。
何を代入しますか?
・・・
\(Q(x)\)の手前に着目して、\(x=1\)または\(x=-2\)と気づけましたでしょうか?
それでは、実際に\(P(1)\)と\(P(-2)\)を計算してみます。
\(P(1)=a+b=3\)・・・①
\(P(-2)=-2a+b=6\)・・・②
しっかりと、「余り」を取り出せましたか?\(P(1)\)と\(P(-2)\)は、既にわかっていますから上の①②の式が出来上がります。
最後に連立方程式を解いてあげれば完成です。
①②より\(a=-1 , b=4\)となり、
余りは、\(-x+4\)。
できましたでしょうか?
練習問題②
もう1問典型問題を解いてみましょう♪
\(P(x)=x^{2022}-x^{2023}+1\)であるとき\(x^2-1\)で割った余りを求めてみましょう。
ちょっと難易度上がりましたか?
慌てずに、いつも通りやってみましょう。まず、
$$P(x)=(x^2-1)Q(x)+ax+b$$
と書いてみます。\(x^2-1\)が「0」になるように\(x\)を探すので、
今回は\(x=1\)または\(x=-1\)でよさそうです。
では、早速
\(P(1)=a+b\)・・・③
\(P(-1)=-a+b\)・・・④
できましたか?ところで、今回 \(P(1)\)と\(P(-1)\)の値はどうやって求めましょう?
気づきましたか?
\(P(x)=x^{2022}-x^{2023}+1\) はパッと見ると「うわっ!」って思うかもしれませんが、\(x=1\)や\(x=-1\)を代入するくらいなら簡単にできるんです。
実際には\(P(1)=1\)で\(P(-1)=3\)となります。
それでは、先ほどの③④の式を完成させましょう。
\(P(1)=a+b=1\)・・・③
\(P(-1)=-a+b=3\)・・・④
③④より\(a=-1 , b=2\)
よって余りは、\(-x+2\)。
できましたか?
まとめ
剰余の定理の問題は複雑そうに見えるのですが、実際には「余りを取り出す」ということを意識してあげることで、見通しがかなり良くなります。
頻出の問題も\(P(x)\)の正体が不明だったり、次数が大きい式であったりしても「余り」が分かってしまうという何とも不思議な問題です。がんばって習得して、この不思議な感覚を味わってみましょう。
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